昇華

時間を超える意志的な憐れや戯れ

夏の子供

 夏の刺激に幽閉された蝉の幼虫、悲劇的なものを演じているだけの彼女たちの律儀な血、大脳皮質に射す夕焼けのオレンジ、雑音にうなだれる茶トラのとなりで織る時間の糸、あらゆる時間の矢を打ち返す物理学的なものを崩壊させる試み、布団のバンズに挟まれてハンバーガーみたいに眠る君の寝顔にこそ世界平和はあふれているから、退屈な思想や、体系化された理想なんていらないし、もしかしたら、平和なんて言葉もいらない。

 こけて血だらけのOL、そこらじゅうに散らばる夢、歩く足並みはスタッカートで、声を荒げる駅前の感情や、過剰摂取した現実により狂う彼らの曇ったメガネは、はずせないマスクゆえに憂いは倍増するし、感染者は増える一方やし、大人はDai Youngって叫んでるし、走る思いがスケボーに乗って走り去るハードコアな日々の迷い、一日中吐き散らした彼女の憂鬱を超越した途端に躁状態に至り、受胎告知を終えた別れた彼女の記憶を重複した先には、しあわせそうな家庭で遭難する私、甲殻類アレルギーやのに食べる海老カツの味が口内にひろがる間にも、宇宙は狡猾に広がり続けている、という忌々しさ、狐の嫁入りを平凡とながめる夕暮れ、紅蓮の太陽がドクドクと唸りを上げて、一日の終わりを呪うあたりからバグる世界、歯に止まる白ゴマ、抜いてない親知らずから敷衍していく暗黒物質、老いた犬、絨毯にこぼれた烏龍茶、しびれた足と大脳が結婚して、フレキシブルなものがあふれて風呂が沸くような世界を迎合したくて、生きているフリをしてるし、理不尽を受け入れているような演技を続けているし、買ったばかりの靴の踵を踏んでるし、涙腺なんて枯れ果てたし、支配されていることには一向に慣れないから、ジーパンの膝を破って、シワだらけの膝を露呈させては、卑下しているばかりの空疎なコメント欄を燃やして、一切は霧となり、まやかしはすべて消える。

 不純物でいっぱいの水を飲んで目を覚ましいくファシストたちの道理に跪くのが、人間の心理をいじくりまわし、いじらしく悶える真実も、真理を見失い、途端に不死身になる孤独たちが、全体主義に移行し、独裁者の出現をよろこぶころには、事実は今に沈み込み、時代のはざまに消えゆくのみだ、と惚れた腫れたでは飯は食えぬ、と陥れるためにうそぶき、付きまとう君の異物感の滑りを良くするための雨が降り続ける。