昇華

時間を超える意志的な憐れや戯れ

応用されるたまの夏

濡れた君の髪、みどり色のサンダルと、焦げた目玉焼き、刹那は殺伐としているし、この宇宙での描写からは逃れられないし、霊廟から吹き抜ける冷たい風が、すべてを化石に変えるし、かさばるだけの昨日と、叶わない明日が混ざり合い夏になる、とビー玉の中でくるまる猫がカタルシスに至るまでの距離に基づく計算式を裏切り、まつわるほどに憎しみに変わるだけの生活から抜け出して、清潔な夏に帰還する。君の論理的なとんち、カンカンと鳴る階段の音が紊乱なものや、わざわいを伝える。夏のざわめき、川沿いの饐えた匂い、エタノールの雨が降り、セミが鳴き止み、闇夜で契りをかわす君たちの荘厳な恋が実る。ベランダから眺める懐かしい君の産毛、鞭毛につつまれた古代からの部屋、抑揚のない返事が反響する退屈な今朝、配線が自由に繋がれている故に動かないテレビ、届かない声と声がぶつかりあって出来たのが、この宇宙らしいんだって語る少女が羽化するまでの修羅を超える宮沢賢治、上空でパチパチと弾ける入道雲、君の枷を外して、バックミラーに君の口紅で落書きして、静観する夢や幻の先では、理解を超えた世界から生まれてくるものが、物語を調律し、あざやかな音をかなでる君は遊びまわっても潰えない身体を持っているらしく、このくたびれた空間を縁取る意味もない出来事の繰り返しを走り抜けては、大人になっただらしない身体を恨みながら、しいたげられていくだけの世界に責任転嫁して、世界を憎むことだけに専念する。カニバルな連中が支配する社会が宣伝するデカダンスな看板が、デカデカと都会を縁取る。この世界という監獄で感電している君の心音も聞こえなくなり、この世界では、命に価値はないらしく、あったとしても、生きるためだ、と狩られる運命なのだよ、と斡旋されているだけの奴らが悲しそうな目で見つめる先では、愛のようなものが、胃の中でほどけていく。世界とは奪うためではなく、生み出すために存在してはいるが、その存在を配合し、存在意義などを見出すために奪い合う戦争が生態系を崩していき、慈しむ隙もなく、欺瞞ばかりで、いろめき立つほどにずれていってしまう今の戦利品は唯一、終わらない夏だよ、と笑う彼女の横顔だけが、鋭利に私を傷つけるあいまいなストーリーがブクブクと太る前に、君も世界も裏切って、はなから誰も信用に値しないし、値したとて、そこでの価値などはカチカチに固まって、瞬く間に私を傷つけるだろうから、このカラカラに乾いた夏を愛するために、その終わらないと騙る夏に自ら騙されてやろう、と思う夏の始まりとまじわる春の汚穢とたわむれ、浪費されるための忌々しい欲との対立を終え、退屈に吸血されるまにまに現れる苦しみに似たようなものから決別する夜の合間に現れる曖昧さがこじつけるものから乖離していく。