昇華

時間を超える意志的な憐れや戯れ

鉄の国

甘い卵焼きで出来た車、飼い主を傷つけないために爪を噛む猫、やさしい妻が待つ家、荘厳な風景にまじわる罪、あまりある意味の中では、ほとんどの意味などは無意味なものに転換し、少数の意見に騙されているだけの人々が騒ぎ立てる正義などに清潔さなどはないから、そのようなものには懐かずに思い出なんかは走り去る夏、似合わぬ水着を来た人々、順序よく記憶をむしばむ白髪のおばあさん、あらゆる悲劇を噛み締めたが故に擦り減った歯、濁った肺が生み出す止まらない咳など、いろんな出来事がかわるがわる起きては消えていき、ここでの出来事を破壊するために物理学を超越し、詩的に生きるのだよ、と促す私の世界では、どのようなことも単純明快にして、今に支配される前に、その今すら超越する。ニジマスの綺麗な背中、すべての物事に反旗を翻す君の胸、流動的な意識をプラスチックに変えるための工場を破壊する戦闘機、憎しみを豊かに創造するための争いが数億年続いて、凍てついた翅がもげるまでの角度、悲劇を加工する文学のルーツはドストエフスキーだ、とうそぶく自らの憂鬱にひそむ空間から生まれた数学的なものにより消費されたが故に、自らの罪の意識にすら気付かずに、誰かに罪をなすりつ、あたかも自分の罪を昇華させ、浄化したかのように見せつけるためのためらい傷から現れる紋章から、この世界が生まれたのだ、と惰性な私たちが制した意味などは、瞬時に夢物語に変わり、ぜんぶはガタガタになる。慰めとしての仏教に羽根が生えてきて、あらゆるものを飛び越えては、いく当てもなくさまようガラクタとフラクタルの二人、四次元から生えた老木の棲家、カビまみれの動物の慟哭、むしばむ病んだ国家、ガジュマルにのぼる猿の憂鬱、夏の孤独を三乗させたような理不尽さ、ビジョンなんて初めから存在しないからこその体たらく、そのような嫉みにより老けた世界より宇宙的な悲しみを抱く母たちの無碍な表現によりゲシュタルト崩壊していく喜びに耽る。