昇華

時間を超える意志的な憐れや戯れ

健やかな足

夏の空は近いようで遠い、と海辺で濡れた君の髪が理想的な角度に揺らぐまでに起きた風のことを数学的に考えているあいだに降り注ぐあいまいな紫外線により出来たシミの意味を考える。宇宙空間に飛び出して、地球の表面のザラザラに触れる。あらゆる悲劇もちいさく纏まり、とりとめのないものが跛行し、さらなる苦痛を巻き込んでいく暗黒物質もよく見れば餡子みたいだね、と懐かしむ彼女の横顔の質感が恒久的に敷衍して、裁かれるだけの夏の青や、シロップにまみれたガラスのお椀、新たな刺激を持ち込む夜風のモコモコ、タバコの煙のモヤモヤや、時代にめり込む奴らの普通なんかが過激な思想を用いて、悪戯に消費されるだけの日々の緻密さなどに気付きもしない奴らの刺激により、改ざんされる世界は最も終わりに近づく、とペシミズムに囚われた連中が情けなんかを持ち込んで、闊達な理由を述べる理想なんかを超越して、加算されるアイロニーや、理性すらもなく、荒んだ自分を戒めるためのためらいなんかが仰々しく迫り、あらがうほどに増していく憎しみが加算される日々の悲痛な叫びが反響する世界という名付けられたハリボテの虚像や虚栄をつきぬけるほどの喜びを尖らせるための鋭利な詩、しびれた大脳に切り刻まれた未来、君のマリッジブルーにうるさい近隣の獣たち、あらゆるセンテンスを忘我に打ち込んで、林立するセオリーに反して、脛骨に響く私の声が花火のようだ、と切り取る未来の最中でサカナみたいに泳ぐ君のミステリアスな思想が普及し、私の世界は書き換えられて、手なずけられずに、何かを懐かしんだり羨んだり恨んだりもせずに、ウランまみれの日常や、ストロンチウムを吸収した青魚たちや、差別主義者たちが滅ぼした民族たちの悲しみが舌なめずりし、ウイルスに占領された怒りが火花を散らして、つたない感情がまどろみに消え去り、些細な出来事が消費していく思い出から解き放たれ、たび重なる苦悩なんかを弄るための軋轢なんかを引き起こす。健気な貶し合いにより、底なしの憎悪が生まれ、奪い合うためにうごめく思念がジレンマを生み、いびつな理想が人々をコントロールし、昏倒していく意識は、言い訳がましく今に正解すらもないから、すらすら嘘をついて、適当に愛して、どうにかなりそうな今に編み込まれた罪を解いて、途端に愛することを諦めない。f:id:jibmfmm:20210531063932j:image